はじめに
COOとして事業を前に進めていると、契約書は日常的に目にする書類になります。
業務委託契約、取引基本契約、秘密保持契約、代理店契約、アライアンス契約など、契約の種類は多岐にわたりますが、実務の現場では内容を十分に理解しないまま締結されているケースも少なくありません。
契約書は、トラブルが起きたときに初めて本当の意味を持つ書類です。
締結時に軽く見ていた条文が、後になって事業の足を止める致命傷になることも珍しくありません。
本記事では、COOが契約書をレビューするときに、最低限どこだけは必ず見ておくべきかという実務ポイントを整理します。
契約書は法務の仕事だと思った瞬間に事故が始まる
多くの組織では、契約書は法務や管理部門の仕事という認識が根強くあります。
もちろん条文の細かい適法性チェックは専門家の役割ですが、COOが中身を理解せずに判子だけ押す体制は極めて危険です。
- この契約で会社は何を約束しているのか
- 会社は何をしなければならないのか
- 何ができなくなるのか
この三点を自分の言葉で説明できない契約に、COOが署名するべきではありません。
契約とは、法律文書である前に事業のルールそのものです。
ルールを理解せずに事業を動かすのは、目隠しをして現場に出るのと同じです。
まず最優先で見るべきは責任範囲と損害賠償
COOが契約書で最初に見るべきポイントは、責任の所在と損害賠償の範囲です。
ここが曖昧なまま契約すると、トラブル発生時に会社がどこまで責任を負うのかが一気に不明確になります。
- どこまでが自社の責任か
- 相手方の責任はどこまでか
- 損害賠償額に上限があるか
この三点が不利な内容になっていると、事業規模に対して過剰なリスクを背負うことになります。
実務では、取れる利益よりも損害賠償の上限額のほうが大きいという逆転現象も普通に起こります。
COOは、このリスクが事業として許容できるかという視点で必ず確認すべきです。
解約条件と契約期間は事業の自由度を左右する
契約書の中で、見落とされやすくかつ事業への影響が大きいのが契約期間と解約条件です。
- いつまで契約が続くのか
- どんな条件で解約できるのか
- 途中解約に違約金があるか
この条件次第で、事業の撤退や方向転換が事実上できなくなることがあります。
特に新規事業や実験的な取り組みでは、長期拘束型の契約は極めて危険です。
COOは、この契約が事業の柔軟性を奪っていないかという視点で必ずチェックする必要があります。
知的財産と成果物の帰属は必ず確認する
業務委託や共同開発の契約で、最もトラブルが多いのが成果物や知的財産の帰属です。
- 作った成果物の権利は誰に帰属するのか
- 二次利用はできるのか
- 契約終了後も利用できるのか
この条文を曖昧にしたまま進めると、後から自社で開発したと思っていたものを自由に使えないという事態が普通に起こります。
事業の中核になる資産を将来も自由に使える設計になっているかを必ず確認する必要があります。
秘密情報の範囲と管理義務は必ず現実と照らす
秘密保持契約は、形式的に締結されがちですが実務上の管理と乖離しているケースも多くあります。
- 何が秘密情報に該当するのか
- 社内で誰まで共有できるのか
- 管理方法は現実的か
実務で守れない義務を契約に書いてしまうと、その時点で常時違反状態になります。
COOは契約上の義務と現場の運用が本当に一致しているかを必ず確認しなければなりません。
再委託と下請けは禁止されていないか
業務委託契約では再委託禁止条項も重要な確認ポイントです。
- 自社は再委託できるのか
- 海外や外部パートナーは使えるのか
- システム開発などで実務に支障はないか
この条文を見落とすと、実務上どうしても必要な外注がすべて契約違反になるケースもあります。
実務の動線と契約条件が噛み合っているかを必ず確認する必要があります。
契約違反時の対応フローは想定できているか
契約書には違反時の対応も必ず書かれています。
- 是正期間は設けられているか
- 即時解除が可能になっていないか
- 違約金や損害賠償はどう定義されているか
この条件次第で、少しのミスがすぐに契約解除や訴訟に発展する構造になっていることもあります。
COOは、この契約に違反したとき何が起きるのかを事前にイメージできる状態にしておく必要があります。
COOが契約書レビューでよく感じる違和感
多くの契約書を見ているとCOOとして直感的に違和感を覚えるパターンがあります。
- 相手方だけ有利な条文が連続している
- 責任の所在がすべて自社に寄せられている
- リスクに対する対価が不釣り合い
こうした契約は後から必ずトラブルになります。
COOの役割は法律的に問題があるかどうかだけでなく、事業として本当に割に合う取引かを判断することです。
この感覚がなければ契約は単なる紙切れになります。
まとめ
COOが契約書で最低限見るべきポイントは条文の細かい合法性ではありません。
責任の範囲、損害賠償、解約条件、知的財産、秘密情報、再委託、違反時の対応、これらが事業として許容できる内容かどうかです。
契約書は法務の書類である前に事業の設計図です。
この設計図を理解せずに事業を動かすと、どれだけ戦略が正しくても予期せぬ地雷を踏み抜くことになります。
契約書を読むことで事業の未来を守る役割を担っていることを常に意識する必要があります。

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