はじめに
COOとして事業運営に関わり始めたときに多くの人が最初に悩むのが「営業やマーケティングに、どこまで踏み込むべきなのか」という問題です。
現場の施策に口を出すべきなのか、それとも数字だけを見ていればよいのか。この判断軸が曖昧なまま業務に入ってしまうとCOOは消耗します。
この迷いの正体は、能力不足や経験不足ではありません。
COOとして設計すべき「売上モデルの全体構造」を、最初に言語化できていないことが原因です。
売上は出ているのに手応えがない。数字を見ているはずなのに、次の一手が判断できない。
こうした状態に陥るCOOの多くは、施策やKPIの前に整理すべき「構造」を飛ばしてしまっています。
本記事では、COOが営業・マーケティング領域において最初に設計すべき売上モデルの全体構造と、その意思決定の考え方を、教科書的に整理します。
COOが語るべき「売上モデル」とは何か
COOの文脈で語られる売上モデルは、単なる営業戦略やマーケティング施策の集合ではありません。
それは、売上が生まれ続けるまでの一連の構造そのものを指します。
具体的には、次の要素が一貫した流れとしてつながっている状態です。
- どの顧客を主な対象とするのか
- どのような価値を提供するのか
- どのチャネルで顧客と接点を持つのか
- どのプロセスを経て受注に至るのか
- どの単価・契約条件で収益化するのか
重要なのは、これらを個別最適で見るのではなく、全体構造として捉えることです。
COOの仕事は、営業施策やマーケ施策を考えることではありません。
この構造が再現可能か、スケールしたときに破綻しないかを判断することにあります。
なぜCOOが最初に売上モデルを描く必要があるのか
売上モデルを明確にしないまま事業を運営すると、組織では次のような現象が起きます。
- 営業は受注件数を追いマーケはリード数を追う
- KPIは増え続けるが全体像が誰にも説明できない
- 売上は伸びているのに利益やキャッシュが残らない
これらは現場の努力不足ではありません。
売上を生む構造が定義されていないまま、部分最適が積み重なっている状態が原因です。
COOが売上モデルを描かないまま組織を動かすと、現場はそれぞれ正しい判断をしているつもりでも全体としては噛み合わなくなります。
その結果、COOは後追いで問題に対応する「調整役」に引きずり込まれ、本来の構造設計の仕事ができなくなります。
売上モデルは「施策」レベルではなく「構造」レベルから考える
売上の話になると、どうしても次のような施策レベルの議論に偏りがちです。
- 広告のCPAはいくらか
- 成約率を何%にするか
- 営業人数を何人増やすか
これらはとても重要ですが、COOが最初に考えるべき問いではありません。
COOが最初に向き合うべきなのは、こうした施策が組み込まれる「構造」です。
- 売上が伸びたとき、どこが最初にボトルネックになるのか
- 人を増やさずに伸ばせる前提なのか、人海戦術なのか
- どの工程が壊れると全体が止まるのか
この構造を描かずに施策だけを積み上げると、売上が伸びた瞬間に組織が破綻します。
COOが最初に整理すべき5つの構成要素
売上モデルを設計する際、COOは最低限次の5点を整理しておく必要があります。
- ターゲット顧客の定義
どの顧客層を主戦場とするのかを明確にします。
「誰にでも売る」という状態は、売上モデルを設計していないのと同じです。 - 提供価値と競争軸
価格、スピード、専門性、サポートなど、何で選ばれるのかを定義します。
競争軸が曖昧だと、営業現場は判断できません。 - 売上創出プロセスの基本構造
マーケティングと営業の役割分担、責任の境界を明確にします。 - 単価・契約・収益の取り方
月額かスポットか、継続前提かどうかで、事業の性質は大きく変わります。 - スケール時の前提条件
成長時に人を増やすのか、仕組みで回すのかを事前に想定します。
売上モデルを描かずに失敗する典型パターン
売上モデルを描かないCOOが陥りやすい失敗パターンがあります。
- 営業最適化が進み、利益率が悪化する
- マーケ施策が増え、管理不能になる
- 数字は出ているが、将来の再現性が見えない
この状態では、COOは常に「今月どうするか」の話に追われ、中長期の構造改善に手を付けられなくなります。
CEO・CMO・COOの売上モデルに対する視点の違い
売上モデルを見る視点は、役割によって異なります。
- CEO
事業全体の方向性とストーリーを見る。 - CMO
顧客獲得と認知、マーケ施策の成果を見る。 - COO
売上が「仕組みとして回るか」「再現可能か」を見る。
COOの視点が欠けると、売上は一時的に伸びても、組織として持続しません。
売上モデルが描けている状態のチェックリスト
次の問いにCOO自身が答えられるかが重要です。
- なぜこの売上構造なのか説明できるか
- 成長時にどこが壊れるか想定できているか
- 人が入れ替わっても回る前提か
- 現場に任せる範囲と自分が決める範囲が明確か
これらに即答できない場合、売上モデルはまだ描けていません。
売上モデルは最初から完成していなくてよい
売上モデルは仮説で構いません。
重要なのは、前提と仮説をCOO自身が把握し、説明できる状態にあることです。
最初に全体構造を描いているかどうかで、後の修正コストと混乱は大きく変わります。
まとめ
COOが営業・マーケティング領域で最初にやるべき仕事は、施策を考えることではありません。
- 売上が生まれる全体構造を描く
- その構造が再現可能かを判断する
- 現場が迷わず動ける前提を作る
これが、COOとして売上に責任を持つための第一歩です。

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