はじめに
多くの会社に事業計画は存在しています。
しかし実務の現場を見ていると、その事業計画が「本当に経営と現場を動かしている会社」は驚くほど少ないのが現実です。
立派な資料はあるのに、日々の意思決定ではほとんど参照されていない。そんなケースは決して珍しくありません。
COOの立場で見ると、これは単なる運用の問題ではなく、設計と使い方そのものが間違っている構造問題であることがほとんどです。
本記事では、事業計画が形骸化する会社に共通する失敗パターンを、COO目線で構造的に整理します。
失敗パターン① 作ること自体がゴールになっている
事業計画が形骸化する最も典型的なパターンが、「作ること自体が目的化してしまう」ケースです。
- 上場準備のために作る
- 金融機関に提出するために作る
- 親会社や投資家に説明するために作る
こうした目的そのものが悪いわけではありません。
しかしこの場合、事業計画は「見る人のための資料」になりやすく、「動かす人のための設計図」からズレていきます。
COOの視点では、この瞬間に事業計画はすでに半分死んでいると言っても過言ではありません。
失敗パターン② 戦略と現場オペレーションが完全に分断されている
多くの会社で見られるのが、「戦略は経営層、オペレーションは現場」という綺麗すぎる分業構造です。
- 経営会議では高尚な戦略の話
- 現場では今日の数字とクレーム対応
- 両者がほとんど接続していない
この状態では、事業計画は経営会議の中だけで完結し、現場の行動には一切影響しなくなります。
COOは本来、戦略と現場をつなぐ翻訳者であるはずですが、そこが機能していない会社ほど、事業計画は見事に形骸化します。
失敗パターン③ 数字だけが一人歩きする
事業計画が形骸化する会社では、数字だけが異常に精緻につくられていることがよくあります。
- 売上
- 利益
- 成長率
- 投資回収
一見すると「きちんと作られた計画」に見えるのですが、
「誰が」「どの組織で」「どういう業務で」この数字を作るのかが、ほとんど書かれていないケースが非常に多いです。
COOの目線では、この状態は「実行主体が存在しない計画」と同義です。
失敗パターン④ KPIが戦略とつながっていない
KPIは本来、戦略と現場を結びつけるための接続装置です。
しかし実務では、次のようなズレが頻発します。
- 高付加価値戦略なのに件数KPI
- LTV重視なのに短期売上評価
- 品質重視なのに処理件数KPI
この状態では、現場は戦略と無関係な方向に最適化されます。
COOの立場では、「戦略が悪い」のではなく、「戦略を裏切るKPIを置いてしまった」ことが最大の失敗要因になります。
失敗パターン⑤ 組織設計と人員計画が最後まで曖昧
事業計画の中で、最後まで曖昧なまま放置されやすいのが組織と人員計画です。
- 誰が責任を持つのか
- マネジメントラインはどこまでか
- 採用はいつ、何人、どんな人材か
ここが詰まっていない計画は、実行フェーズで必ず崩れます。
COOの役割は、この「一番面倒で、一番重要な部分」を最後まで具体化し切ることにあります。
失敗パターン⑥ 現場に翻訳されないまま降りてくる
事業計画が完成したあと、その内容がそのままスライドの形で現場に配られるだけ、という会社も非常に多いです。
- 部門長は読む
- 現場は読まない
- 具体的な行動に変換されない
これは「情報を伝えた」と「意味が伝わった」を完全に取り違えている状態です。
COOは、事業計画を現場の言葉に翻訳し、業務単位まで噛み砕いて説明する役割を担います。
このプロセスを飛ばす限り、事業計画が現場に根づくことはありません。
失敗パターン⑦ 修正されない前提で運用されている
事業計画は、必ずズレます。
市場も、競合も、顧客も、想定どおりに動くことはまずありません。
- 計画は絶対
- 修正は負け
- 想定外は現場の責任
こうした運用がされる会社では、事業計画は「現実と戦う道具」ではなく、「現実を否定する道具」になってしまいます。
COOにとって重要なのは、計画を守ることではなく、「ズレたときにどう直すか」を設計することです。
成功している会社は事業計画をどう扱っているのか
一方で、事業計画が実務で機能している会社には、明確な共通点があります。
- 月次で必ず計画と実績を突き合わせている
- 計画が部門KPIと完全に連動している
- 計画修正が「通常業務」になっている
- COOが計画を使って現場と会話している
これらの会社では、事業計画は「資料」ではなく「会話の道具」になっています。
そしてその会話の中心に、常にCOOが立っています。
事業計画が形骸化する会社としない会社の決定的な違い
両者の違いは、作り方の巧拙でも、数字の精度でもありません。
計画を「使う前提」で作っているかどうか、この一点に尽きます。
- 使う前提で作れば、現場に落とす設計になる
- 見せる前提で作れば、資料として完結する
COOは常に、「この計画は現場でどうやって使われるのか」という問いを自分自身に投げ続ける必要があります。
この問いを失った瞬間、事業計画はただのスライド資料に変わります。
まとめ
事業計画が形骸化する原因は、個別のミスではなく、構造的な設計ミスの積み重ねです。
戦略とオペレーションの分断、KPIのズレ、組織設計の曖昧さ、翻訳不足、修正前提の欠如。
これらが重なったとき、事業計画は現場で完全に機能停止します。
COOの役割とは、事業計画を「作る人」ではなく、「使い続ける人」になることです。
この視点を持てるかどうかが、形骸化する会社としない会社の決定的な分かれ道になります。

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