はじめに
COOが営業・マーケティング領域を管掌する際、最初に直面する難しさは「正解が変わり続ける」という点にあります。
ある時点では合理的だった売上モデルが事業の成長とともに急に機能しなくなる。これは珍しいことではありません。
売上モデルは一度設計して終わりのものではなく、事業フェーズに応じて更新され続ける構造です。
にもかかわらず、多くの企業では売上モデルそのものではなく施策やKPIだけを調整し続けてしまいます。
その結果、
- 売上は伸びているのに組織が疲弊する
- 数字を見ているはずなのに判断が遅れる
- COOが現場対応に引きずり込まれる
といった状態に陥ります。
本記事では、COOが売上に責任を持つ立場として事業フェーズごとに売上モデルをどう捉え、どこに関与すべきかを整理します。
なぜ売上モデルはフェーズ別に設計し直す必要があるのか
多くの売上モデルの失敗は、「間違った設計」ではなく「フェーズが変わったのに設計を変えていない」ことに起因します。
創業期に成立していたモデルは、
- 人が少ない
- 判断が早い
- 例外対応が許される
という前提の上に成り立っています。
事業が成長すると、これらの前提は次々に崩れます。
にもかかわらず、売上モデルだけが据え置かれると歪みが一気に表面化します。
COOの役割は、「いまの売上モデルは、どの事業フェーズを前提に成立しているのか」を常に言語化し次のフェーズに耐えられる構造へ更新することです。
立ち上げ期(0→1)における売上モデルとCOOの関与
立ち上げ期の最大の目的は、売上の再現性が存在するかを見極めることです。
この段階では売上モデルの完成度は重要ではありません。
このフェーズの売上モデルの特徴
- 属人的でも成立する
- プロセスが未整理でも問題ない
- 数字が安定していなくても許容される
重要なのは、「なぜ売れたのか」「なぜ売れなかったのか」を構造として説明できるかどうかです。
COOがやるべきこと
- ターゲット顧客を明確にする
- 提供価値と反応の因果関係を整理する
- 売上が偶然か必然かを切り分ける
このフェーズでCOOがやってはいけないのはKPIやオペレーションを過度に作り込むことです。
必要なのは現場を通じた事業モデルの学習です。
成長初期(1→10)における売上モデルとCOOの関与
成長初期に入ると売上モデルには「拡張性」が求められます。
売上が個人の力量ではなく、構造によって伸びるかどうかが問われるフェーズです。
このフェーズの売上モデルの特徴
- 人員増加が前提に入る
- マーケティング投資が本格化する
- オペレーション負荷が急増する
COOがやるべきこと
- 売上プロセスを属人から構造に引き上げる
- ボトルネックを特定し先回りで設計を変える
- 「人で回す部分」と「仕組みで回す部分」を切り分ける
この段階でCOOが関与しないと一部の優秀な人材に依存したまま売上だけが膨らみ、利益率や再現性が急激に悪化します。
拡大期(10→100)における売上モデルとCOOの関与
拡大期では売上モデルは「設計」から「統制」へと重心が移ります。
このフェーズで問われるのは、再現性が組織全体に共有されているかです。
このフェーズの売上モデルの特徴
- KPIが共通言語になる
- 部署間の前提ズレが顕在化する
- 判断スピードが業績に直結する
COOがやるべきこと
- KPIを意思決定に使える形に整理する
- 営業・マーケ間の前提ズレを修正する
- 売上モデルを個人の理解から組織の共通理解に昇格させる
ここでCOOが数字を見るだけの存在になるとKPI管理が目的化し、売上モデルそのものが形骸化します。
成熟期・転換期における売上モデルの再設計
事業が成熟すると既存の売上モデルは必ず鈍化します。
このフェーズで必要なのは改善ではなく再設計です。
COOがやるべきこと
- 既存モデルの限界を正面から認識する
- 過去の成功体験を前提から外す
- 売上モデルを壊す判断を下す
この段階でCOOが守りに入ると事業は緩やかに衰退します。
フェーズが変わればCOOの関与の仕方も変わる
フェーズが変わったのにCOOの関わり方が変わらない状態は危険です。
- 立ち上げ期:深く入り、仮説を作る
- 成長初期:構造を設計し直す
- 拡大期:判断と統制に集中する
- 成熟期:壊す決断をする
同じ距離感で関与し続けることは、それ自体が事業ひいては会社運営におけるリスクとなりえます。
まとめ
売上モデルは固定された設計図ではありません。
事業フェーズに応じて更新され続ける構造です。
COOに求められるのは、
- 現在の事業フェーズを正しく認識すること
- 売上モデルの前提を言語化すること
- 次のフェーズに耐える構造へ更新すること
この判断を誰よりも早く下す、そのための情報を集約していくことです。

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